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あいち熊木クリニック院長熊木徹夫の精神科無双夢想 ~<あいち熊木クリニック>開設、その後~
院長である精神科医の熊木徹夫と、建築家の筧清澄が、 臨床と建築に対するそれぞれのこだわりを、余すところなく出し尽くす場としてのブログです。


プロフィール

熊木&筧

  • Author:熊木&筧
  • 熊木 徹夫

    2007.07「あいち熊木クリニック」開設


    筧 清澄
    1968 06 10
    1998 筧建築設計開設

    筧建築設計
    名古屋市中村区下米野町3-29
    k-kakehi@za2.so-net.ne.jp
    TEL/FAX 052-451-9976



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NHKスペシャル「うつ病治療 常識が変わる」所感・・今後精神科に受診する患者さんたちへのヒント
久しぶりにTV番組を見た。

NHKスペシャル「うつ病治療 常識が変わる」
(NHK総合:2009年2月22日(日)PM9:00~)というものだ。
http://www.nhk.or.jp/special/onair/090222.html


これについて、一精神科医として考えるところがあり、
今後精神科に受診する患者さんたちへのヒントになることがあったので、述べてみたい。
(<>内は、番組ダイジェストに書かれていた記事より転載)


<100万人を超えたうつ病患者。

これまで「心のカゼ」と呼ばれ、休養を取り、
抗うつ薬を服用すれば半年から1年で治ると考えられてきたが、
現実には4人に1人は治療が2年以上かかり、半数が再発する。>

<その背景に、

1:治療が長期化している患者の多くが、
不必要に多くの種類や量の抗うつ薬を投与されていたり>


1:これは確かに由々しき問題である。

私自身、抗不安薬・睡眠薬・抗うつ薬について、
処方経験が乏しいと思われる医師(精神科医とは限らない)が乱脈な投与を行う例が、
このところ非常に増えているような印象を持っている。

精神科の薬は、その誤処方だけで直接命に関わることが少ないだけに、
でたらめな処方を行っていても、一見大きな問題にはなりにくい。

しかし実は、向精神薬ほど、処方が難しく熟練を要する薬は他にないのだ。

その理由として
A:患者さんの病態(とりあえず、精神症状と考えていい)把握が非常に難しいこと
B:向精神薬の特徴を把握することも非常に難しいこと
C:双方(患者さんと向精神薬)のマッチングを行うのに独特の技術を要すること
が挙げられる。

このところ、精神科薬物療法のアルゴリズムやマニュアルといったものを1~2年かけて身につけただけで、
”専門家”を名乗る医師が増えているが、
このようなものだけで専門治療が行えると考える医師が出現してきていることは、本当に空恐ろしいことである。

また長期漫然投与、および”載せるだけで引くを知らぬ”処方が増えているのも事実であろう。

薬は、載せることより引く(薬を減らす)ことの方が、数段難しい。

載せるばかりの薬物治療は、アクセルの踏み方しかしらず
ブレーキの踏み方が分からぬ車の運転になぞらえられ、まったく危険極まりない。

一度積み上げられた薬は、将棋崩しの駒に似て、崩さずに引き抜くことは容易ではない。

たいへんな忍耐と技術が要る作業なのである。


<2:診断の難しいタイプのうつ病が増加していることが専門家から指摘されている>
<3:さらに、医師の技量レベルにばらつきがあることも明らかになってきた。>

2・3:ここでは、診断の難しいタイプの”うつ病”の例として、双極2型障害が挙げられていた。

これによらず、従来からある内因性うつ病の症候にはまらぬ、
非定型なうつ病やうつ状態(非定型うつ病はまた別物)が増えてきているのは確かである。

自称うつ病の患者さんが大挙するなか、軽症のうつ病が掘り起こされてきている印象がある。

しかし軽症といっても、治りやすいものだとは言い切れないのだ。

軽症のものは、患者さんの訴えが実に多様で、診断がつきにくいことが多い。

また定型的な内因性うつ病のように、シンプルな処方が奏功しないことも多い。

むしろ、医者泣かせなのである。

それはともかく、双極2型障害について一言。

これは、双極性障害(従来の躁うつ病)の一種で、
持続的なうつ状態を基調とし、そこに周期的な軽躁が伴う疾患で、
うつ病とは似て非なるものだ。

(当然治療的アプローチもまるで違う)

だが、この疾患をまだ知らない精神科医が多いのには驚かされる。

例えば、当院(あいち熊木クリニック)に来る前に、精神科を5件回り、
それぞれで「うつ病」と診断されており、またどこにおいても「うつ病」の治療が行われていたケースがあった。

多種類にわたる抗うつ薬が使われていたにも関わらず、感情調整薬はひとつも使われていなかった。

当院での診断は「双極2型障害」。

そこで、感情調整薬を処方の軸に据え、抗うつ薬を大幅に減薬していったところ、
寝たきりの生活から、ようやく普通の暮らしに戻った。

このようなケースは、ひとつやふたつではない。

同業の精神科医に申し上げたい。

私は、非常に患者さん思いで、かつ勉強熱心な精神科医を身近にたくさん知っている。

そのような人々の営為がもっと光を浴びるようになることを強く望む。

(今回のNHKスペシャルでは、残念ながらそのような人々の存在は紹介されていなかった)

またその一方で、あまりに不勉強な人々は精神科医(自称”精神科医”も含む)をやる資格はない、と。

患者さんが、精神科医との出会いの偶然でその人生を翻弄されるようなことがないように、
専門家を名乗る精神科医は等しく臨床力向上に努めるべきである。

(ただ患者さんも、良い精神科医・悪い精神科医の見分け方・選び方を
身につけていかなければならない時代がきている。

では実際、そのような能力を会得するためにどうすべきか。

答えになっていないかもしれないが、ともかく「よく見ればわかる」。

そう、いろいろ会ってみて経験してゆくしかない。

もちろんそのために、本記事を参考にしていただくのもよいであろう)


<4:薬の処方を根本的に見直す取り組み>

4:杏林大学の田島先生が、これまでの不適切な処方を正す精神科医の例として出ておられた。

投薬を繰り返すなかで、医原性疾患(医療が元で引き起こされる疾患)が出現する可能性は常にある。

このことを自覚・自戒しつつ処方を行うこと、これは当たり前のことである。

緊張感のない漫然投与が続くなら、この医原性疾患のワナにはまる。

これを避けるには、患者さんの体に徹底的に訊くことだ。

もし患者さんが自分の体の感じ方を語る言葉を持っていないのなら、
それを”開発”してあげるよう働きかけるのも精神科医の仕事だ。

患者さんの体がささやくか細い”声”に、医師・患者ともども耳を傾ける。

それを身につけるのは簡単なことではないが、まず意識しなくては始まらない。

また、患者さんが欲するからといって、患者さんのいいなりに投与する医師もいけない。

このような医師は、患者さんの向精神薬依存を作る。

患者さんの望む方向がふさわしくない方向であるなら、
嫌がられようと何であろうと意見するのも、専門家なのではなかろうか。


<5:また、「うつ先進国」のイギリスでは2年前から、
国を挙げて抗うつ薬に頼らず、カウンセリングでうつを治す「心理療法」を
治療の柱に据え、効果を上げている。>

5:ここでは認知行動療法の例が挙げられていた。

臨床心理士による心理カウンセリングは当院(あいち熊木クリニック)でも行っているが、
お金の問題は頭の痛いところである。

しかし、開院当初より、薬物療法オンリーの治療の弊害を強く感じ、
どうしてもカウンセリングがおこなえる環境を作りたかった。

ここに登場する精神科クリニックの某先生も、苦闘されているようで、
なかなか身につまされる話だと感じた次第である。

ただ、番組において、薬物=悪、カウンセリング=善という短絡が感じられたが、
これは果たしていかがなものか。

そのほかにも、精神科クリニック=悪の図式もあるように見えた。

NHKは、ニュートラルな情報を目指していることはよく分かるし、
普段のNHKスペシャルでは、このような単純な善悪の図式を持ち出すことなく、
価値観の押し付けをしない姿勢が見受けられ、そこに良心を感じる。

その点、今回の放送では、精神医療に対するプロデューサー(?)の先入観が勝ちすぎたのか、
全般にわたりいささか偏りのある問題提起である印象が拭えなかった。

なにしろ影響力の大きいNHKスペシャルである。

極力ニュートラルな姿勢を保持した上での、今後のうつ病報道の展開に期待したい。


熊木徹夫(あいち熊木クリニック・精神科医)
あいち熊木クリニックのサイト:http://www.dr-kumaki.org/
臨床感覚の広場のサイト:http://www.dr-kumaki.com/
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