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あいち熊木クリニック院長熊木徹夫の精神科無双夢想 ~<あいち熊木クリニック>開設、その後~
院長である精神科医の熊木徹夫と、建築家の筧清澄が、 臨床と建築に対するそれぞれのこだわりを、余すところなく出し尽くす場としてのブログです。


プロフィール

熊木&筧

  • Author:熊木&筧
  • 熊木 徹夫

    2007.07「あいち熊木クリニック」開設


    筧 清澄
    1968 06 10
    1998 筧建築設計開設

    筧建築設計
    名古屋市中村区下米野町3-29
    k-kakehi@za2.so-net.ne.jp
    TEL/FAX 052-451-9976



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<<★特別音声情報「うつ病」★>>
一般的で、精神科・心療内科の難しい知識を要しない特別音声情報を、
みなさんにプレゼントします。
(10分で聴くことができます!)

普通のオーディオ機器でも、パソコンでもお聞きになることができます。
ぜひ一度、耳を傾けてみてください。
必ず、みなさんのお役にたてるものと信じております。


5「見逃してはならない”うつ病性障害のサイン”~自殺志願者・自殺願望のチェックから、仮面うつ病の発見まで~」10:16


***

「あいち熊木クリニック(愛知県日進市竹の山、精神科・漢方外来)」のご紹介
0622待合



あいち熊木クリニック院長
熊木徹夫
熊木徹夫のtwitterメインアカウント
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『リスパダール液を大量服薬したらどうなる?』
こんにちは、あいち熊木クリニックの熊木です。

「あいち熊木クリニック」のご紹介



▼△▼----------------------------------------------------------------

『リスパダール液を大量服薬したらどうなる?』

~ 精神科医熊木徹夫の「公開悩み相談」~

--------------- http://www.dr-kumaki.com ---------------------△▼△


こんにちは、熊木です。

今回は、2つの質問に答えることにします。

まずは、apricoさん(36歳・女性)のご質問から。


<Q1:リスパダールについて質問があります。

最近、液体のリスパダールを処方されて
それについている「劇薬」の”劇”という文字におののいています。

別サイトで調べたところ、
”胃袋いっぱいにのんでも、死にはしません”とありました。

それを見てほっとしたものの、それは錠剤の場合ではないかと思っています。

液体だと吸収も早く胃洗浄にもまにあわないでしょう。

実際のところ、致死量はどのくらいなのでしょうか。

安心のため、きいてみたいと思います。


なお、私は精神科にかかってこれで7年過ぎましたが、
OD(大量服薬)経験はありません。

今回、劇薬について調べたおかげで、
錠剤ならすでに(合計)のべ5種類も劇薬にあたるものをのんでいる、
またはのんでいたことがわかりました。

表示がなかったので、これまで知りませんでした。

でも、どれも気が遠くなるほど貯めないと死ねない
(しかも死ぬかどうかは50%)ということがわかり、
この量では無理だな、と思えて安心できました。

”液体でも、何Lも必要だといいな”と思っていますが、いかがでしょうか>


A1:私もリスパダールの致死量を調べてみたのですが、
確たる情報はありません。

ただ、比較的安全な薬という認識があります。

(とはいえ、”ODしても後遺症など残らない”などという保証はいたしません)

幸いapricoさんはこれまでOD経験がないということで、結構なことですが、
今後もそれを維持していただきたいと思います。

”薬を貯める”というのは我々精神科医にとり看過できないことですので、
道義的に”そんなことしてはダメだ”というわけですが、
現実的には、服み控えてジワジワ貯め込んでいる人は
決して少なくないだろうと推察されます。

”薬を貯める”人には、次のようなタイプがあると思います。

(1)薬に精神的に依存しており、薬がきれてしまうのが恐ろしい。

(2)”いつでも死ねる”量の薬物を準備しておければ安心。

apricoさんの場合、”仮にODに及んでしまった場合、
死ぬかもしれないことには強い恐怖があるが、
それでも薬を貯めずにはおれない”ということですから、
(1)と(2)の折衷型で、死というものに対して
アンビバレンツがあるといえそうです。

apricoさんや、(2)のタイプの人々に
精神科医が「死ぬことはいけないことだ」と説教を垂れても、
実効性は乏しいだろうと考えられますが、
それでもこのような患者さんの態度を目の当たりにしたとき、
精神科医はそういわざるをえません。

apricoさんのこのようなご質問に対しては、
道義的な関わりが無化されてしまうという意味において、
精神科医である私は、いささか困惑するのですが、
まあ臨床の現場にあってはそう珍しいことではありません。




さて、次のご質問は、たまにゃん さんからのものです。


<Q2:初めてお便りします。

これまでずっと医療機関から「境界性人格障害」と説明されてきたのに、
診断書に「心因反応」とかいてあり、
これはどういうことなんだろうと疑問に思っています。

私は医療関係者なので、精神病になれば免許剥奪の危機もあります。

また現在信頼できるのは知り合いのカウンセラーのみという状態なのですが、
経済的理由から何回もいくことはできません。

その間は常に「リスカ」「どうやって死のうか」
「何を整理し、書き残していかなければならないか」などと考えています。

朝調子悪く夕方調子いい、人付き合いしたくない、
という「うつ状態」のような状態にあります。

借金してでもカウンセリングを受けるべきでしょうか?>


A2:「心因反応」「抑うつ状態」「自律神経失調症」などは、
”方便・かくれみのとしての病名”で使われることが多く、
病気の本態を表していないということは、よくあることです。

「心因反応」は精神病ではありませんので、
免許剥奪に怯えられることはないでしょう。

”ずっと医療機関から「境界性人格障害」と説明されてきた”とありますが、
説明してきたのは、精神科医ですか。

”現在信頼できるのは知り合いのカウンセラーのみ”ということですので、
いまのところ、まあそこにかかるしかないですが、
この方は、臨床心理士でしょうか、それとも無資格のカウンセラーでしょうか。

健康保険が使えないカウンセリングであれば、
5000~15000円/1時間というのが相場ですので、
確かに余程裕福な方でないかぎり、
そうそう通いつめるというわけにはいきません。

現実問題として経済的な問題が無視できないのであれば、
やはり健康保険が使える医療機関で、
相性のあう精神科医なり臨床心理士なりを探すほかはないでしょう。

借金してカウンセリングにかかるというのは、
まずいだろうと思います。

確実な投資だと考えられるものについて、
借金をするのはアリかもしれませんが、
(将来的には経済活動に結びつくかもしれないものの)
当座金銭が発生しないカウンセリングにお金をつぎ込むことは投資とはいえず、
返すメドもたたない状況では、この借金はあまりに危険です。

まあ私の回答は以上です。何かの参考になるといいのですが。


(おわり)



熊木徹夫(あいち熊木クリニック<精神科医・漢方医>)
あいち熊木クリニックのサイト:http://www.dr-kumaki.org/
臨床感覚の広場のサイト:http://www.dr-kumaki.com/

『毎日カップラーメンにジュース・・放っておいていいの?』
こんにちは、あいち熊木クリニックの熊木です。

「あいち熊木クリニック」のご紹介



<熊木先生、はじめまして。

私は、居宅支援事業の相談に当たっている者です。

今年からその仕事に従事し始めて、いろいろな戸惑いを感じています。

私自身にとっての、患者さんに対する理解の助けとなれば
との思いで、投稿させていただきます。>


さて今回は、パイナップルさんの2つの質問に答えることにします。

まずは一つ目の質問。


<Q1:{30歳の統合失調症患者、Yさんのこと}


アパートで単身生活。

人に対して緊張感が強く、気疲れの強い人。
(と、就労所の職員からの情報)

毎食カップラーメンを食べます。

たまに何か作って食べるといっても、
ハンバーグだけを食べたりして暮らしています。

ヘルパー派遣により食事の偏りを是正しては、と持ちかけても応じない。

それは改善意欲がないのか
あるいはヘルパー派遣での気遣いを嫌がってのことか不明。

”それならば”と安価な宅配の弁当の情報を持っていったが、
それも「いいことですね、ありがとうございます」という
返事はあるものの、受け取ってはくれませんでした。

この方には肥満にまつわる生活習慣病
(最近話題のメタボリックシンドローム)があり、
内科受診を勧めていたところ、
だんだん精神的に落ち込みが強く見られるようになって、
ついには、軽就労の場にも出てこれなくなりました。

そして、週に1回掃除のために入っていた
ヘルパーの訪問も拒否するようになって、
とうとう親元(別の市)に帰ってしまうことになりました。

私は、この方に対して何を支援すればよかったのでしょうか。

服薬管理、・・これは問題なかったと聞いています。

が、状態悪化したのはなぜ?

主治医と連絡を取り合えばよかったのか。

生活習慣病の治療・・本人に問題意識があればよいだろうが、
そうしようとしない場合は、家族に相談するのがよかったのでしょうか。

また、主治医からの働きかけをお願いすればよかったのでしょうか。

せっかく単身生活をスタートさせたばかりだったのに、
残念な結果になってしまいました。

そしてこれは、この患者さんに限らず、
一般的に若い男性にみられることなのでしょうか?

若い男性は、食生活を重要視していない人が多いように思います。

だから、患者さんに限ったことではないのかもしれませんが、
食生活の極端な偏りや生活習慣の固定化等が
将来の病気の再発に繋がるかもしれないので、心配してしまいます。

毎日カップラーメンで平気とか、
毎日ジュースと缶コーヒーを2本飲む習慣とか、本当にいいのでしょうか。

極端な生活習慣の固定化は、
どういうこころの状態からくるものなのでしょうか?>


A1:このような方、実は珍しくありません。

<人に対して緊張感が強く、気疲れの強い人>とありますが、
統合失調症の患者さんだと、このようなタイプが多いですね。

<毎食カップラーメンを食べます。

たまに何か作って食べるといっても、
ハンバーグだけを食べたりして暮らしています。

ヘルパー派遣により食事の偏りを是正しては、と持ちかけても応じない>

というのも、よくわかります。

ある生活習慣をかたちづくると、奇妙なまでにそれに拘り、
誰が何といおうと、頑なにそのスタイルを維持する。

その姿は、ある意味滑稽ですらあります。

しかし、本人はいたって真剣。

”正しい生活習慣”をよそから持ち込まれても、
なかなか適応ができません。

頑固というより、不器用なのです。

ヘルパーであるあなたが良かれと思い、
アドバイスしてくれ、手を差し伸べようとしてくれていることは、
この方はよくわかっているはずです。

むしろ、わかりすぎていて、それを拒まざるをえないことに
かえってストレスを感じているかもしれません。

このような方は、一見人嫌いに見えますが、実は逆。

とても寂しい・人恋しいと感じていることが少なくないのですが、
不器用ゆえ、それを態度でうまく伝えることができない。

他人との距離を測るのに、いちいち過剰な意識をしなければならず、
他人をまったく寄せ付けないか、逆に不自然なまでに接近してくるか、
どちらかであることが多いように思います。



ところで、近頃「ノーマライゼーション」という言葉が、
医療者間でよく発せられます。

これは”正常化”という意味で、深い思慮もなく使われることが多いですが、
実はこの”正常化”というのがくせもの。

たとえば、統合失調症の患者さんであれば、
(入院→退院し、通院)という状況にもっていくのがそうですし、
復職したり、結婚したりさせるのもそう。

いわば、”一般人”の生活に近づけることが「ノーマライゼーション」です。

でも、統合失調症の患者さんは、
そもそも”一般人”の生活が苦手なことが多いのです。

精神科医の中井久夫先生が、著書『分裂病と人類』(東京大学出版会)の中で、
分裂病(統合失調症のこと)の気質をもつ人というのは、
いつの世、どの地域にも普遍的に一定数存在してきた、
それというのも分裂病気質者は人間全体にとって、必要不可欠な存在だからだ、
という趣旨のことを述べられています。

狩猟で生活の糧の大部分を得てきた社会、
あるいはシャーマンが崇められてきた社会では、
分裂病気質者は、むしろ世界の中心にいたのです。

ところが、農耕が主な生産・生活手段となったあたりから、
社会は次第に神経症的になり、
それは工業化社会において、ますます顕著になっていきました。

そして、そのような社会に適応できない分裂病者は、
社会から疎外され、場合によっては精神病院などの施設に
閉じ込められるようになっていきました。

すなわち、分裂病者が”まともかまともでないか”というのは、
時代の趨勢・人々の価値観・許容力などに大きく左右されてきたのです。

私たち医療者は、時折このように、
自分たちが当たり前だと思う見方を相対化しなくてはなりません。

統合失調症患者さんの「ノーマライゼーション」を担う
あなたや私などは、そのことを意識すると、
自分のやろうとしていることが本当に正しいことなのか、
ジレンマを抱えることになりますが、それは仕方のないことなのです。



ただ、このケースでは、社会適応とは違う
もうひとつの「ノーマライゼーション」の軸が問題になっています。

それは、体の健康の問題です。

<肥満にまつわる生活習慣病>をもつ人だということですので、
その体調管理を担うということも、
ヘルパーとして大事な業務になってきます。

しかし、<肥満にまつわる生活習慣病>というのは、
”正常者”(妥当な表現であるかどうかわかりませんが、
一応精神障害者でない人を、ここではこう呼んでおきます)
にとっても、その治療はなかなか過酷です。

自らを律しなくてはならず、その生活は我慢の連続です。

しかも劇的に治ることなどなく、うまくいって予防ができるという程度です。

今の世では、自らの健康を維持すること、他者がその援助をすることは、
一応”正義”と見なされます。

しかし、自らの健康を省みないとしても、
誰にも迷惑をかけてはいないわけですから、
(まあ、援助者泣かせではありますが、
他害行動などが及ぼす迷惑とはまったく質が異なります)
その人の”勝手”だといえば、まあそうです。

そのような事柄にどこまで介入すべきなのか、
あるいはそもそも介入が可能なのか、難しい問題です。

ついでにいうなら、統合失調症患者さんは、正常者”と比較して、
有意に<肥満にまつわる生活習慣病>になる人が多いです。

それは、統合失調症という病気自体のせいなのか、
あるいは内服を欠かすことのできない向精神薬の副作用によるものなのか、
はっきり言い切ることはできません。

(おそらく、その両方が原因でしょう)

加えて、一般に統合失調症患者さんは身体の自己管理が苦手であり、
また自らの生に対する執着が希薄であるように思います。



なんだか、悲観的なことを書き連ねてしまいましたが、
どうにもならないから、何をしても意味がないということではありません。

<「いいことですね、ありがとうございます」という
返事はあるものの、受け取ってはくれませんでした>
とありますが、ここにあなたと彼との関係性が凝縮されています。

一見、矛盾した態度のようでもあり、
またあなたにこころを許していないかのようにも見えますが、
きっとこれが彼のとれるギリギリの態度なのでしょう。

あきらめず彼のことを真剣に考えて関わろうとするあなたに対し、
少々”うるさいなあ”と思ったかもしれぬにせよ、
彼が発したこのお礼の言葉は、真実のものであろうと思います。

彼はあなたの気持ちを察して、このようなことを言った。

あなたも彼の気持ちを察しようとして、あれこれ苦心を重ねている。

これで十分両者のコミュニケーションは成立していると思うのですが、
いかがでしょうか。

このようなことに悩み続けていくことも、我々の仕事のうちです。



熊木徹夫(あいち熊木クリニック<精神科医・漢方医>)
あいち熊木クリニックのサイト:http://www.dr-kumaki.org/
臨床感覚の広場のサイト:http://www.dr-kumaki.com/

『重大な病気かも・・すべてが終わってしまう!』
こんにちは、あいち熊木クリニックの熊木です。

「あいち熊木クリニック」のご紹介



Q:私は31歳の男性で、結婚しており子供もいます。

体の不調(病気や死)について、常に不安がつきまといます。

どうしたらいいか分からなくて、相談いたしました。


私は、四人兄弟(男2女2)の末っ子でした。

両親ともにいて、父には職もあり、生活は普通のレベルだったと思います。

私の幼少時に、父の事業が波に乗り、
すごくいい時期があったらしいですが、あまり記憶にありません。


しかし、小学校低学年から高学年の頃に事業がうまくいかず、
ずいぶん借金を抱えたらしいです。

生活に余裕がないんだなと、子供なりに感じていました。


小学校低学年の時に曾祖母が、中学生の時に父親が亡くなりました。
(父は過労死だと思われます)

このときに漠然とショックがあり、生死に関する恐怖感ができたのかなと思います。

その後私は大学まで進み、教職につきましたが、
五年ほどして退職し、現在は飲食店を営んでおります。


もう一つ思い出すのは、大学生時代の祖母の死亡したことです。

このときは成人でしたので、かなりショックが大きかったことを覚えています。

この祖母は、私をすごくかわいがってくれました。

このあたりから、自分もいつかは死ぬんだなと考えるようになり、
精神的にとても不安になりました。


またこの頃から、体に不調を感じることが多くなりました。

具体的には、以下のようなものです。


1:お腹が痛くなり下痢になる

2:目の周りが痛く、焦点が合わない

3:陰部がただれ、かゆい

4:睡眠不足や浅い眠り

5:記憶力が低下する

6:面白さや、やる気、風景や感覚が鈍い感じ


そして体の調子が悪くなると、重大な病気だと勝手に思い込むようになりました。

ひとたび不安が爆発すると、
体が絶対悪いんだ、重大な病気なんだと思って、
その考えから抜け出せなくなってしまいます。

たとえば喉が痛いとすると、
これは重大な病気で、もうだめじゃないかと勝手に思ってしまい、
不安で不安でたまらなくなる、といった具合です。

重大な病気だと痛いし怖いし不安だ、それに全部が終わってしまう、
といった考えがどうしても頭から離れません。


しかし内科に行っても、毎回、特に体に異常はないといわれます。

そのように告げられると、ホッして一時的に症状はよくなりますが、
しばらくすると、やはりまだ気になって仕方なくなります。

そして次第に、なんとなくこれは
心の問題が大きいのではと感じるようになりました。


今やっと、このような認識にたどりつくようになりましたが、
10年ほど前までは、心理的な問題などではなく、
本当に体が悪いんだと思い込んでいました。

とはいえいまだに、心と体のコントロ-ルがうまくいかず、困っています。

いや、心が先か体が先かさえ、よく分かりません。

時に応じて、出る症状の種類・程度も違うみたいです。

普通の人でも、心理的には不安になると思いますが、
私の場合、その程度がひどいし、問題がかなりあるのではと思います。

それなら、近所の精神科や心療内科に行けばいいのですが、
やはり敷居が高い感じがして、これまで行けていません。


いったいどうすればいいでしょう。

アドバイス、よろしくお願いします。


----------------------------------------------------------------------- 

A:(1;ときとして、自覚症状はつくられる)


まず、あなたの自覚症状から、洗い出してみることにしますね。

各々の症状から、さまざまな疾患を類推することは可能です。


1:お腹が痛くなり下痢になる

これが緊張する状況に伴うものであり、
下痢と下痢の間に、便秘が起きやすいということであれば、
「過敏性腸症候群」という病名をつけることが可能です。


2:目の周りが痛く、焦点が合わない

痛みの種類が定かではありませんが、
もし頭全体が締め付けられるように痛い、それに伴ってこめかみも重く痛い、
というのであれば、これは「筋緊張性頭痛」といえますし、
焦点があわないというのは、「眼の調節障害」で、
これは、「筋緊張性頭痛」に付随しやすいものです。


3:陰部がただれ、かゆい

これは、にわかにはわかりませんが、
「アトピー性皮膚炎」などである症状です。
本当にただれているというのであれば、
「アトピー性皮膚炎」としては掻きむしった後のひどい症状としては分かりますが、
別のものかもしれません。
しかしそれならば、外科や皮膚科で問題になると思うのですが・・


4:睡眠不足や浅い眠り

5:記憶力が低下する

6:面白さや、やる気、風景や感覚が鈍い感じ

「うつ状態」が疑われる症状です。
程度によっては、抗うつ薬など薬物が必要です。
これが問題にならないのは、症状が軽いからか、
これまで受診した医師に精神科医がいないからか・・

自覚症状は、どのような診療科においても大変重要なのですが、
一点注意する必要があります。

それは”ときとして、自覚症状はつくられる”ということです。

それはこういうことです。

何らかの体の不調を感知し、たとえば家庭医学百科のようなものを見る。

よく読んでみるとこの「○○病」というのが当てはまりそうだ。

「○○病」には、他にあれこれ症状があるみたいだ。

そういえば、先月このようなことがあった気がする。

そうだきっとこれに違いない、どうしよう・・

暗示にかかりやすく、潜在的に不安を宿している人なら、
このようなプロセスは思い当たることがあると思います。

翻って、あなたの場合ですが、いかがでしょう。

ある程度、整合的に病気の説明ができそうな自覚症状が並んでいますが、
これが後から加工されたものではなく、はじめからあったものかどうか。

(この判断は、だれにとってもなかなか難しいものですが)



(2;”医学生神経症”とは、どんなもの?)


ところで今回のご相談を受け、私はあるエピソードを想起しました。

あなたは、”医学生神経症”なるものをご存知ですか。

世間では、あまり耳にしない言葉ではないでしょうか。

これは、医療の手習いを始めた医学生が
かかりやすい”病気”の一種(もちろん俗語)です。


医学生は、医学の習い始めに人体解剖を行います。

これは、一種の医学の”洗礼”のようなものであり、
精神科医を志していた私でさえ、
横たわるご遺体という”現実の死(屍)”を前にして、
粛然として襟を正さずにはおれませんでした。

そして、そのご遺体にメスを入れる。

もう後戻りはできない、そのような覚悟が問われる瞬間でした。

このような過程で、貧血をおこして倒れる学生もいますし、
嘔吐する学生もいました。

(私の同期生にはいなかったですが、
ここで自分が医学に適性がないと悟り、
大学を退学していうことも、まれではないようです)


この医学の”洗礼”は、医学生に、ひいては医師に、
独特の心性をもたらします。

医学は死(屍)を礎としてなる学問であること、
すなわち、死(屍)を想定しないところには医学が成り立たないということ、
が当たり前に思えてきます。

例えば、正常な身体のあり方をまず学び(解剖学・組織学・生理学・生化学など)、
そこから歪み、死に傾斜した状態について学ぶ(病理学)という方法が
基礎医学を学ぶ一般的な道筋なのです。

そして、臨床医学では実にさまざまな病気が存在しうることを確認し
(診断学。これは、一種”博物学的”なものです)、
それに立ち向かう方法(治療学)を考える。


しかし、まずは診断学。

そう、西洋医学では、治療学より診断学が圧倒的に重要だと考えられています。

(難病ばかり扱う診療科では、治療学はペシミスティックな見方で被われてしまって、
精緻に構築されつくした診断学だけしか
実質的には機能していないという状況があります)

治療学というのは、希望に通ずる一条の光なのですが、
ここに至るまでの病理学・診断学という道程は、まさに”暗夜行路”です。

その病気が治るか治らぬかについてはまず保留して、
病気の分類・鑑別診断を営々と行いつづけることを余儀なくされるのです。


さてここで、医学生の話に戻りますが、
病理学から診断学を学び、この世に存在するあまたの病気を見せつけられると、
医学生のうちに奇妙なことが起こります。

今教えられた病気が、みな自分の体に当てはまるように思えてくるか、
逆にちょとやそっとの病気に触れても驚かなくなるか。

前者は病気に対し過剰に敏感な状態、
後者は病気に対し過剰に鈍感な状態といえるかもしれません。

両者はまるで逆の反応ですが、いずれにせよ、
従来から持ち合わせていた病気に対する感性では対応がおぼつかず、
これまでと別のかたちの適応をおこなったものと考えられます。

このように医学を学ぶということ、病気を知りすぎるということは、
なかなかに”ショッキング”な体験であるわけです。

先述の”医学生神経症”とは、
”今教えられた病気が、みな自分の体に当てはまるように思えてくる”
状態を指して、いっているのです。

(この表現に、ブラックユーモアが込められているのは分りますか。

他人の体を、知識としてはよく知るはずの医学生や医師(特に専門外の場合)が、
こと自分の体のことになると冷静さを欠いて、
依然無知のまま、ただおののいているこの姿を、
自嘲的に表した”病名”なのですから)


(3;「卵が先か、にわとりが先か」)


ただ、その病気を”本当に知る”(すなわち、真のプロになる)ようになれば、
このような迷いはなくなります。

(ただし、シリアスな現実に直面しなければならない、という
別の過酷さを引き受けねばならなくなりますが)

”なまじ知る”というのが、不安のおおもとになるのです。

(医療のプロではなく、プロの卵である”医学生”に
とりわけこのような”神経症”の症状が出やすいという現実も、
それを証明しているといえます)


ここからは、あなたの話です。

あなたは、大切なお婆さんの死などが引き金になって、
来るべき自らの死に対し、とても過敏になられたということです。

そして、死に対する不安・恐怖から、
体の不調に対しての感度が上昇した、とあります。

すなわち、<身近な人の死>→<死に対する不安・恐怖>→<体の不調に対する感度上昇>
の順に、問題が発生してきたらしい。


しかし、本当にそうでしょうか。

ある時、ふと感じた体の不調。

それがどんどん、気になって気になって仕方がなくなる。

なぜ、自分はこのような思いに捉われ、
日常生活で一歩も外へ出られなくなってしまったのか。

そういえば、どんなささいな症状からでも、
必ずたどりつく感情の行き着く先があった。

それは、自らが死ぬということへの恐怖。

これについて考え出すと、気が違いそうになる。

でも、もとはといえば・・曾祖母が父が、そして祖母が死んだことが引っかかっていたから・・
そうだ、きっとそうだ!

この順番は先ほどとは逆で、
<体の不調に対する感度上昇>→<死に対する不安・恐怖>→<身近な人の死>
ということになります。


このように指摘されると「卵が先か、にわとりが先か」分らなくなってしまうことでしょう。

あなたは、<心が先か体が先かさえ、よく分かりません>とおっしゃっています。

これは表現は違うけれど、同じ状況を指していると思われます。



(4;エンドレスゲームに陥る危険)


あなたは、精神医学的には「心気症」あるいは「心気神経症」とよばれるもので、
近頃はやりの表現では、「身体表現性障害」あたりが該当するでしょう。

自らの体の不調に対して、とても感度が高くなっていて、
何かちょっとしたことから
”これはガンや脳梗塞の予兆ではないか、死んでしまうのではないか”と考えだし、
それが止まらなくなるような状態を指していいます。

実はこれは珍しくありません。

身体科(精神科ではありません!)の受診者のうち、3~4割ほどは心気神経症者だとする
身体科医のアンケート結果があるぐらいなのです。

(心気症者は行く先々で、検査後「大丈夫、気のせいではないか」などといわれ、
いったん安心するものの、その結果を訝り、
また別の病院で検査を受けるということを繰り返す傾向があります。

すなわち、”のべ受診回数”が多くカウントされるのです。

それゆえ、心気症者の実数より、多く存在するようにみえてしまう側面もあり、
このあたりを差し引いて考える必要はありますが)


あなたの場合がそうであるように、
心気症者には、なかなか”安楽の日”は訪れません。

<たとえば喉が痛いとすると、
これは重大な病気で、もうだめじゃないかと勝手に思ってしまい、
不安で不安でたまらなくなる、といった具合です。

重大な病気だと痛いし怖いし不安だ、それに全部が終わってしまう、
といった考えがどうしても頭から離れません。

しかし内科に行っても、毎回、特に体に異常はないといわれます。

そのように告げられると、ホッして一時的に症状はよくなりますが、
しばらくすると、やはりまだ気になって仕方なくなります>

こうなると、エンドレスゲームになってしまいます。


あなたの救いは、自らの受診行動の特性を”鳥の目”で見る
(少しひいて客観的にみる)ことができるに至り、
”心の問題が大きいのでは”と感じるようになれたことです。

このような洞察を自らで獲得するのはなかなか大変なことなので、
”大きく前進した”と自信をもたれていいでしょう。


<時に応じて、出る症状の種類・程度も違うみたいです>

そう、体にキチンとした基盤をもつ病気であれば、
このような症状の推移は、少し奇妙です。

さあ、そのような状況に気づいたのは良しとして、
<精神科や心療内科へ行けばいい>かどうか。

いくばくかの向精神薬を処方されて楽になることもあるのですが、
あまり楽にならぬ場合もあります。

どこかの精神科医がもっと楽にしてくれるはずという信念を抱くと、
うまくゆかぬ場合にまたドクターショッピングが始まり、
”いつか来た道”へ逆戻りということになってしまいます。



(5;体の不調について、本当に徹底的に考え抜くと・・)


では、いったいどうすればいいでしょう。

ひとつふたつ、提案いたしましょう。


人はいずれ死ぬ存在だというのは、誰にとっても不可避な事実です。

日々その死に向かい傾斜していくという事態も、
赤ん坊でさえ免れうるものではありません。

ゆえに、人間の体が何らかの不調を抱えるのは仕方のないことです。

このような生老病死に対する怖れがあるのは、誰にとっても当たり前のことです。


あなたは、自分はその程度がひどい、とおっしゃる。

その通りでしょう。

その”弱さ”の克服ではなくて、”弱さ”の自覚をしておくことができるなら、
あなたはかなりの問題をクリアできるでしょう。


さらに踏み込むとしたら、
体の不調をいつもいつも考えているというあなた、
本当に”いつも”考えていますか。

案外そんなことはないものです。

もし、”いや、やっぱりいつも考えている”というなら、
本当に意識的にそのように実践してみるといいです。

24時間、体のある部分の不調に神経を集中しつづける。

これはなかなかできることではありません。

体の不調について徹底的に考えるなら、やがて疲れ果てるでしょう・・
そうしたら、もっと別のことがしたくなる。

それなら別のことをしましょう。

それでいいのです。

体へのこだわりが煮詰まったら、この”治療法”を思い出してみてください。

ここからほどける何かがあるはずです。




熊木徹夫(あいち熊木クリニック<精神科医・漢方医>)
あいち熊木クリニックのサイト:http://www.dr-kumaki.org/
臨床感覚の広場のサイト:http://www.dr-kumaki.com/

『僕は殺されたんだ、父に復讐してほしい』
こんにちは、あいち熊木クリニックの熊木です。

「あいち熊木クリニック」のご紹介



Q:外国に在住している日本人です。

現在幻聴と思われる症状があり
ご相談させていただきたく思います。

私は35歳女性、現在カナダ在住です。

こちらで開業医の先生からお薬をもらい、
同時にカナダ人の心理学者の先生の
英語でのカウンセリングを受けています。

一度精神科にも診てもらったのですが、
何となく真剣に話を聞いてくれていないような気がしてしまって、
2回診てもらっただけで、辞めてしまいました。

今回幻聴がひどくなった気がするので、
他の先生を紹介してもらいたいと開業医の先生にお願いしましたが、
カナダでは精神科に見てもらうには2-3ヶ月またなければならず、
まだ診てもらっていません。

幻聴の内容ですが、1年半前に流産を経験し、
その子供の声が聞こえてきます。

流産当初は特に聞こえなかったのですが、
その約一年後にその相手(子供の父親、オランダ人です)
からそのことを否定され、
無視され続け始めてから、症状が出ました。
(それまでは彼に話していませんでした。)

妊娠中病院へいけなかったのは、
子供の父親が主人ではないのがわかっていたからです。

また妊娠に気がついたときには、
相手の方は既に家族を裏切ってしまっていることを
とても後悔しているのがわかっていたので、話を切り出せず、
症状からして切迫流産だと思ったので、
そのまま黙っていようと決心しました。

流産したときも自分としてはほっとした気持ちの方が強く、
その時は特に死んだ子供に対しての
罪悪感なども感じていませんでした。

ただうつのような状態になってしまうことが多くなりました。

その後しばらくしてから彼とは完全に別れて、
お互いに家庭へ戻る約束をし、
自分としては全て忘れて一からやり直そうと思っていました。

しかし、その直後に不倫について
脅迫めいた嫌がらせを受け取るようになりました。

それを相手に相談したのですが、無視されてしまいました。

また仕事に関しても同じオフィスをシェアしたりしていたのですが、
そこからいきなり追い出され、
預けてたお金などもそのままになってしまいました。

それらが重なったため、
それまで張り詰めていた糸が切れたようになってしまったのです。

辛い思いに耐え、相手のことだけを考え、
流産の件を隠していた自分が馬鹿だったのだと思い、
これまで考えていたことを手紙で書き送りましたが、
何の返事もありませんでした。

その時は、お金欲しさのあまり、
彼自身が私に嫌がらせしているのだと思ったので、
彼に対してとても攻撃的になってしまいました。

しかしその後、しばらくしてお金は戻ってきました。

また知人から聞いた話では、
彼も同様に嫌がらせを受けていたそうで、
結局私が間違っていたことがわかったのですが。

その頃から時々、死んだ子供の声が
聞こえるような気がするようになりました。

自分は殺されたんだ、父親がいないのは寂しい、
父親に復讐してくれ、
一人で寂しいから私もこっちにきて
一緒に居て欲しいとか聞こえてきます。

そのこと以外にも、仕事の面で彼からサポートを受けていたため、
仕事におけるダメージも大きく、
この半年間は建て直しのストレスもかなり大きかったと思います。

今では、安心できるところまで仕事面では回復したのですが、
無視されている、否定されているという思いが
いつまでも頭に残っています。

またオフィスがすぐ近くであるため、
道ですれ違ったりすることは避けられず、
そのたびに物凄く怒りを感じ、同時に深い悲しみに襲われ、
吐きそうな気分になることもあります。

仕事の場所はタイです。
一昨年までそちらに住んでおりました。

仕事の関係で付き合いのある人たちが重複してしまっています。

彼の奥さんから「私が彼を追い回し、
妊娠したと嘘をついて困らせている。
仕事上の付き合いをしている場合はやめたほうがいい」
といった内容の中傷のメールなどがあちこちに送られ、
とても困っているのですが、
それを辞めさせてくれるよう彼にお願いしても、
全く返事はありません。

私の方からはよく事情がわからないのですが、
人づてに聞いた話では、
彼本人は彼の奥さん(台湾人です)が
私から嫌がらせを受けていると思っているようなのです。

実際には、彼女にそのようなことは一切していないのですが。
(お金を返してくれるようお願いしたことと、
嫌がらせをやめてくれるようメッセージをしたことはあります)

とにかく何も話してはくれないので、
向こうに何が起きているのかもわかりません。

ただ私から奥さんへの”嫌がらせ”は、
私がノイローゼになってしまったためだと思われているようです。

自分の家庭の方は、この件だけが原因ではないのですが、
離婚となりました。

(主人は、カナダ人です。

離婚で私が家を出なくてはならないのですが、
一人娘を置いていかなくてはいけないので、
そのことでもとても参っています。

一年後に私が引き取る約束ですが、
本当に渡してもらえるのかとても不安です。

また私がいない一年間に、
日本語が話せなくなってしまったりするのではないかと
恐れています。

この先、娘がどんどん遠ざかっていってしまうような気がします。

それから話は複雑なのですが、これまでここで話してきた嫌がらせ、
実は私の主人と彼の奥さんが一緒につるんでやっているとしか
解釈できないことが多くあるのです。

この点については、私だけの思い込みではなく、
私の知人数人の見解の一致するところです。

まあ、どちらにも恨まれて当然であることも十分承知していますので、
このことは辛くとも耐えてゆけると思います)

心理学者の先生からは、
”原因となった相手と話をして、
心の痛みを分かち合ってもらうことのみが、
唯一短期的治療としてできること。

あとは抗うつ薬を服みつづけて20年もたてば、
やがてはすべてを忘れて、幻聴も聞こえなくなるだろう”
と言われました。

私の幻聴は原因があまりにもはっきりしているので、
精神病として取り扱う種類のものではないとの見解です。

最初に診てもらった精神科の先生も同じ意見でした。

ただ頼んでみても無視され続けるのはわかっているので、
流産の時の診断書(流産後に残留物がないか検査行っただけですが)や
精神科医からの幻聴に関する診断書を渡したらどうかとの
アドバイスを受けています。

けれどもこれまでの経過から、
そこまでしてもきっと無視されてしまうでしょうし、
そうなるとかえって症状がひどくなるような気がするのです。

そのような状況ですので、カウンセリングで言われたように、
原因となっている部分へ立ち返って、
それを一度私の心の中で、
きちんと死んだ子供のために父親と共に葬ってあげる、といったことは、
とても不可能ではないかと思います。

でもそれをしない限り、いつまで経っても幻聴が消えないことを思うと、
いっそ人生のすべてを今ここで投げ出してしまったほうが
楽になるような気もするのです。

(先生はそれは幻聴ではなく、
自分の罪の意識が作り出しているだけのものだ、
とおっしゃっています)

先月出張し、私の新しいオフィス
(数ヵ月後には私もそこへ引っ越します)の近くに
彼らが住むことになっていることがわかり、とてもショックでした。

今後毎日のようにすれ違うことになるかと思うと、
こころ穏やかでおれず、
今よりも症状が悪くなってしまうのではないかと不安です。

それが原因かどうかわかりませんが、
この2週間、幻聴のおこる回数が増したように思います。

1週間前からZyprexaという薬をもらって飲んでいますが、
特に効果はない気がします。

それ以外に現在医師より、
Talohexalという抗うつ薬を毎日服むように言われています。

このTalohexalは数ヶ月飲んでいます。

自分としてはうつになる時間が減ったようには思います。

お伺いしたいのは、
私の症状から統合失調症などの精神病になってゆく
可能性もあるのかということです。

統合失調症では、幻聴がメインの症状だと聞きました。

最初に診て頂いた精神科の先生には、
統合失調症とは全く別のタイプのものだから、
治療は原因を取り除くことに限ると言われました。

そして、お薬も出されませんでした。

いわゆるPTSDのようなものだと言われました。

この病名をインターネットなどで調べてみましたが、
戦争などの極端な体験をした人がかかる病気となっていますので、
自分ではそれは違うのではないかと思っています。

ただ幻聴の主因となっているはずの相手に
誤解されたままであることの悲しさ、
そして子供を見殺しにしまったことへの罪悪感は、
今後つのるばかりではないかと思うのです。

それが影響して、精神病に移行していったり
することもあるのでしょうか?

精神科的には、このような症状は
ただのショックから来る一時的な症状で、
長い時間が経てば治るものと考えていいのでしょうか?

それとも相手の認知が得られない場合、
ずっと症状が続いてしまうのでしょうか?

この点、どのようにお考えになられますか?

いまのところ、離婚や引越し・仕事の建て直しなど、ほとんどの面で、
事は良い方向に向かっていると感じています。

それなのに、幻聴だけが悪くなっているというのがとても心配です。

あまりにも不可解な話で、
自分でもすべてを分かっているわけではないので、
言葉で説明するのも難しいのですが、
日本語で相談できる精神科の先生に
ぜひアドバイスを頂きたいと思い、メールさせていただきました。

よろしくお願いします。

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A:<1;”倫理”や”罪”を臨床の現場で問うことの難しさ>


今回のご相談では、再三”罪悪感””罪の意識”
という言葉が出てきます。

日頃臨床に携わっていて、
”倫理”とは何か、”罪”とは何かということについて、
一介の精神科医が意見を述べることの難しさを痛感しています。

しかし、避けて通ることのできない問題であることもまた事実です。

患者さんの、ひいては人間の生き方についてあれこれ言うのは、
医師のなかでもとりわけ精神科医において特異的な事柄です。

私がこのようなご相談を受けたなら、
どのような”道”を指し示そうとするか、
お答えしてみたいと思います。


ご相談の中には、実に多く、かつ多国籍の”登場人物”がいますね。

そして各々の思いや利害が複雑に入り混じっています。

そこで最初に、各々の”登場人物”について考えてみましょう。


<2;渡る世間は鬼ばかり・・・?>


まず、あなたに不倫され、あなたとの離婚に至ったご主人について。

この不倫だけが離婚の原因ではないとのことですが、
一人娘の”綱引き”が今後展開されていきそうな気配。

あなたが不在である間に、この一人娘が
あなたがこれまでに教えてきた日本語を
しゃべれなくなるのではと心配されています。

また、オランダ人の彼の奥さんとあなたのご主人がつるんで、
”彼との間の子を妊娠したと吹聴している”という中傷メールを
あちこちに送っているというような奇怪な事態!

これが事実であるならば、
あなたのまわりの人間関係は錯綜としたもので、
全くとりとめがありませんが、まあこれは置いておきましょう。


それにしても、肝心なご主人のパーソナリティがよくわからない。

あなたからのこのような”仕打ち”(不倫のことです)に恨みを募らせ、
仕返しを果たそうとしているのは、うなずけない話ではありません。

(あなたも<恨まれて当然であることも十分承知していますので、
このことは辛くとも耐えてゆけると思います>といわれていますね)

でもあなたの不倫を知り、取り乱したのか、
はたまた気弱に笑みを浮かべたのか、
そこのところがよくわかりません。

(おそらく後者なのでしょう。

あなたのお話から類推するなら、
このご主人の怜悧で狡猾なさまが思い浮かびます。
しかしこれも定かではありません)


そして、あなたとつきあいのあったオランダ人の彼。

<妊娠に気がついたときには、
相手の方は既に家族を裏切ってしまっていることを
とても後悔しているのがわかっていたので、話を切り出せず、
症状からして切迫流産だと思ったので、
そのまま黙っていようと決心しました。>

あなたがそのような配慮をされたにもかかわらず、
それが”あだ”となるような事態に巻き込まれます。

<その直後に不倫について
脅迫めいた嫌がらせを受け取るようになりました。

それを相手に相談したのですが、無視されてしまいました。

また仕事に関しても同じオフィスをシェアしたりしていたのですが、
そこからいきなり追い出され、
預けてたお金などもそのままになってしまいました。>

この期に及んで、なしのつぶて。

彼は、妊娠・流産の事実を目の当たりにしても、
その事実を否認し、あなたに何の同情も寄せようとしません。

<辛い思いに耐え、相手のことだけを考え、
流産の件を隠していた自分が馬鹿だったのだと思い、
これまで考えていたことを手紙で書き送りましたが、
何の返事もありませんでした。

その時は、お金欲しさのあまり、
彼自身が私に嫌がらせしているのだと思ったので、
彼に対してとても攻撃的になってしまいました。>

確かに彼の薄情さは尋常ではありません。

この彼をたとえひとときでも愛したあなたが、
とても気の毒に思えてきます。

そして遂には、死んだ子供の声が聞こえてくるようになります。

”自分は殺されたんだ、父親がいないのは寂しい、父親に復讐してくれ、
一人で寂しいから私もこっちにきて一緒に居て欲しい”と。
(この幻聴については後に詳述します)

まあ、うなずけない話ではありません。


最後に、彼の台湾人の奥さんについて。

<彼の奥さんから
「私が彼を追い回し、妊娠したと嘘をついて困らせている。
仕事上の付き合いをしている場合はやめたほうがいい」
といった内容の中傷のメールなどがあちこちに送られ、
とても困っているのですが、
それを辞めさせてくれるよう彼にお願いしても、全く返事はありません。

私の方からはよく事情がわからないのですが、人づてに聞いた話では、
彼本人は彼の奥さん(台湾人です)が
私から嫌がらせを受けていると思っているようなのです>

最初に”嫌がらせ”を始めたのは誰なのか。

相手の奥さんは、あなたが先だと思っているようだし、
あなたから見ると、順序が逆のようでもある。

問題はこのような”混線”が生じた原因は、
どうやら彼にありそうだということ。

彼が自ら犯した”不始末”について、
自分の奥さんに詳細を知らせず(あるいは誤魔化し)、
あなたを悪者に仕立てたようであることが予想できます。

そこに、<それから話は複雑なのですが、
これまでここで話してきた嫌がらせ、
実は私の主人と彼の奥さんが一緒につるんでやっているとしか
解釈できないことが多くあるのです>
というのが事実であるとするなら、
まさに”渡る世間は鬼ばかり”、
あなたは救われようがないことになります。


<3;その幻聴は、子供の苦しみの名を借りた、あなたからの呪詛の言葉>

それにしても、いつもいつも被害者であるあなた、
あなたには問題がないのでしょうか。

<妊娠に気がついたときには、
相手の方は既に家族を裏切ってしまっていることを
とても後悔しているのがわかっていたので、話を切り出せず、
症状からして切迫流産だと思ったので、
そのまま黙っていようと決心しました。

流産したときも自分としてはほっとした気持ちの方が強く、
その時は特に死んだ子供に対しての罪悪感なども
感じていませんでした。

ただうつのような状態になってしまうことが多くなりました。

その後しばらくしてから彼とは完全に別れて、
お互いに家庭へ戻る約束をし、
自分としては全て忘れて一からやり直そうと思っていました>

この時点では、彼との関係はあなたにとって麗しき思い出で、
あなたは悔恨の情にとらわれることはなかったようです。

しかし流産の事実を、流した子供の父親である彼から否定され、
あなたが無視されるようになったあたりから、
”自分は殺されたんだ、父親がいないのは寂しい、父親に復讐してくれ、
一人で寂しいから私もこっちにきて一緒に居て欲しい”
という幻聴が出てくるようになります。


症状の出方は、本人が規定することはできませんから、
出方の良し悪しなどを論じることはできませんが、
私は個人的には、この症状にあまり”感情移入”することはできません。

このような言い方は、精神医療の専門家の云いとして
相応しいものではないのかも知れませんが、
どうしても”惻隠の情”というものが湧いてきません。

専門家なら、どのような精神疾患や精神症状にも全力を尽くす必要があると
お考えになるかもしれませんが、
私は、治療者の”価値判断”が
その”疾患”の予後をある程度左右することはやむなし、と考える者です。

私は臨床の現場で、
”これは死ぬほど苦しいだろう。
何の因果で、この人はこれほど苦しまねばならぬのか”
と、同情を禁じえぬ場面に多々遭遇します。

その一方で、”その程度の苦しさを大げさに言い立てるとは、
少し我慢が足りないのではないか。
救済者側の私の現状の方が、きっとよほど苦しい”
などと感じることもままあります。


この感じ方の違いは、その疾患の重篤さのみが、
基準となるものではありません。

その患者さんの境遇・生き方・人生観などから
複合的に捉えた判断です。

もちろん、この判断の正否に絶対の自信があるわけではありません。

これはいわば、”相性”のようなものかもしれません。

私の場合でいうなら、統合失調症の苦しみに
比較的シンパシーが働くように思います。

しかし、統合失調症の患者さんには無条件に優しいのではありません。

概していうなら、自己陶酔の強い患者さんのその”酔い”に対しては、
冷淡です。”勝手にすれば”と思うこともあります。

その”酔い”を斟酌せずとも、彼らは”死なない”でしょう。

それに対して、患者さんに強い切迫感があり、
”今目の前にいる私が助けなくては誰が助けるのだ”という義侠心が
湧き出してくるような場合には、
本当に緊急を要するものと思っています。

そこには、患者さんにも治療者の私にも、
”酔い”など入ってくる余地はありません。

このような状況にこそ、
精神科医という存在は”処方”されるべきものでしょう。


ところで、あなたの幻聴という症状ですが、
厳しくいうなら、それは”都合のいい症状”とでも
いうべきものでしょう。

あなたのまわりのエゴイストなら、あなたもエゴイストです。

<先生はそれは幻聴ではなく、
自分の罪の意識が作り出しているだけのものだ、
とおっしゃっています>とありますが、本当にそうでしょうか。

その幻聴は、子供の苦しみの名を借りた、
あなたから近親者に対する呪詛の言葉であって、
あなたの子供の無念をあらわしたものではないように思います。

これはPTSDに似たものではないと思います。

トラウマとは、不可抗力の状況で受けた外傷をさすもので、
あなたが加担して作ったこの状況をトラウマティックと呼ぶのは
少し解釈が親切すぎます。

また統合失調症とは、やはり似て非なるものです。

統合失調症の幻聴は、大抵の場合、”自我違和的”なものであって、
「死ね」「おまえはどうしようもないバカだ」などといった
その人の実存を深く傷つけ脅かすものです。

今後、このような形には”発展”していくことはないでしょう。


<4;あなたは簡単に救済されない方がいい>


ではどうすればいいのか。

私はこのような苦しみは、簡単に救済されない方がいい、と考えます。

このたびあなたが、人間の”原罪”に触れたとするなら、
その苦しみをあまんじて受け、徹底的に苦しみぬくこと、
そうでないと、いま心理の先生から与えられている
”お為ごかしの慰撫”だけでは決して解消しきれない何かが、
時を経て再燃することになるでしょう。


<心理学者の先生からは、
”原因となった相手と話をして、
心の痛みを分かち合ってもらうことのみが、
唯一短期的治療としてできること。

あとは抗うつ薬を服みつづけて20年もたてば、
やがてはすべてを忘れて、幻聴も聞こえなくなるだろう”
と言われました>

<ただ頼んでみても無視され続けるのはわかっているので、
流産の時の診断書(流産後に残留物がないか検査行っただけですが)や
精神科医からの幻聴に関する診断書を渡したらどうかとの
アドバイスを受けています>

この心理の先生のアドバイスにも、疑問が残ります。

抗うつ薬を服むのはいいとしても、
20年もたたなくては効果がないような話をされていること、
(通常、1ヶ月もすれば効果が出てきますし、
それで効果がなければ、増薬・変薬を試みます)
また20年服んだあかつきには、
晴れてすべてこころのわだかまりが拭い去れて、
幻聴もなくなるということですが、
抗うつ薬において、このような長期的効果は説明されていません。

まあ”ひぐすり(日薬)”ということがいいたいのでしょうが、
あまり根拠にない話のように感じます。


それから、心の痛み
(先述したように、この言葉を軽々しく使うべきでないとは思いますが)
を分かち合える相手がいないあなたの現状は、
確かに少し厳しいものです。

しかし、流産の時の診断書や精神科医からの幻聴に関する診断書を携えて、
彼の元に行くという行為は、決して現実的なものとはいえないでしょう。

またこうすることのみが、
果たして唯一の短期的治療となるか、疑わしいところです。

(症状を緩和するだけなら、もっといろいろな方法があると思います。

ただし、ここで症状を取り去り、
”喉元過ぎれば熱さ忘れ”るのであれば、
こういうやり方は、あなたの人生において
取り返しのつかないマイナスになるのではという危惧は、
これまでに申し上げたとおりです)

いずれも、あまり”スジ”のいい回答とはいえません。


<5;求められるのは、悩みぬいた果ての”祈り”>


まあそれはともかく、悩みぬいたあなたが辿り着く果ては?

日本に昔からある慣習に”水子供養”というものがあります。

ご存知のとおり、何らかの事情で
この世に生を受けることが適わなかった”子”たちを弔い、
その”子”と関わった”親”たちが
精神の安寧を得ようとするものです。

必ずしも”水子供養”のかたちをとる必要はありませんが、
やはり”祈り”の気持ちというものが大切だと思います。

(”水子供養”を便宜的に用いて、後腐れなく何の葛藤も抱えず
やり過ごしてしまうカップルもいるようですが、
これは”水子供養”の本来的な用い方でないのは
いうまでもないでしょう)


ここまで、かなり厳しいことを話してきました。

責められるべきはあなただけではないかもしれません。

しかし、どこの国へ行っても、どこの国籍の人と接していても、
清い魂の持ち主には、自然清い魂が触れ合いを求めてくるものです。

あなたが居住まいを正すことで、
これまであなたの回りにいたような
薄情な人々の”権謀術数”に嵌められるようなことは二度となくなる、
私はそう信じています。


熊木徹夫(あいち熊木クリニック<精神科医・漢方医>)
あいち熊木クリニックのサイト:http://www.dr-kumaki.org/
臨床感覚の広場のサイト:http://www.dr-kumaki.com/

『お前と俺は運命共同体だ!(5)』
こんにちは、あいち熊木クリニックの熊木です。

「あいち熊木クリニック」のご紹介

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『お前と俺は運命共同体だ!(5)』

~「もう悩まなくていい--精神科医熊木徹夫の公開悩み相談(21-5)」~

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A:<5;秘密保持に伴う危険>

このようなケースに限らず、近頃
いびつに肥大化したナルシシズムがもたらす反社会性が
取りざたされるようになってきました。

(DV:ドメスティクバイオレンス、家庭内暴力なども、これにあたります)

あなたは彼に誠心誠意関わろうとした訳ですが、相手が悪すぎました。

今回の事態は、もちろんあなたに一点の非もありませんが、
今後このような理不尽な"やけど"を負わぬためにも、
若干の警戒心をもつ必要はありそうです。

「秘密にしておいて」「内緒にしておいて」という言葉には、
まれに危険が伴う場合があるということです。

あなたや私も含め医療者は、
患者さんのプライバシーに対し守秘義務があります。

これは当然のことですが、
このような職業モラルにつけ込むほんの一部の不心得者が存在することを、
こころのどこかで意識しておくことにしましょう。


(おわり)


熊木徹夫(あいち熊木クリニック<精神科医・漢方医>)
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『お前と俺は運命共同体だ!(4)』
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『お前と俺は運命共同体だ!(4)』

~「もう悩まなくていい--精神科医熊木徹夫の公開悩み相談(21-4)」~

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A:<4;「誰かにいうと大変なことになる」!>

さて、今後どうすればいいかですが、いくつかアドバイスいたしましょう。

1:他者になるべく現状を伝え、身辺の風通しをよくすること。
2:被害状況の証拠を残すこと。
3:精神科への受診

1:「誰かにいうと大変なことになる」というのは、
彼らストーカーの決まり文句です。

この脅しにあらがうのは、非常な恐怖を伴うと思いますが、
ここは勇気を持つべきです。
(この秘密を維持したままだと、ストーカーの思う壺です)

具体的には、親兄弟・彼氏・友人・職場の上司
(友人・職場の上司の場合、秘密を守ってもらえる人に
限定しなくてはなりません)、そして警察です。

(最近様々なストーカー被害が重なったことから、
ストーカー規制法というストーカー被害者にとって
非常に力強い法律が制定されました。

警察内にも、生活安全課にストーカー対策室が設けられるようになっており、
そこで気軽に相談にのってもらえるようになりました)

それから、携帯電話番号を変えるなど、
ストーカーの侵入経路をふさぐ配慮が必要なのはいうまでもありません。

2:被害状況の証拠は、自分で残せる限り残しておきましょう。

脅迫メール・手紙の類はもちろん、
脅迫電話があるならそれもテープに記録しておきましょう。

(このようなものを集積する作業には、非常な不快さを伴うでしょうが)

これは警察に提出するためのものです。

3:<そして外出するのが怖くてしようがなくなり、
病院にいくこともできなくなってしまいました。

いつも見張られている、聞き耳をたてられている、そんな感じです。>

不本意だと思いますが、精神科の受診をお勧めします。

現時点で、不安・恐怖、それからくるひきこもり、そして被注察感と、
立派に精神症状が存在します。

これは、このような仕打ちを受ければ当然起こってくることですから、
病名は「心因反応」などとなるでしょう。

精神科で、あなたの苦しみを聞いてもらい、
その上で薬(抗不安薬や抗精神病薬など)をもらえば、
いくらか楽になると思います。

いろんな協力者がいた方がいいので、
このような方向からも楽になることを考えてもいいと思います。

(つづく)


熊木徹夫(あいち熊木クリニック<精神科医・漢方医>)
あいち熊木クリニックのサイト:http://www.dr-kumaki.org/
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『お前と俺は運命共同体だ!(3)』
こんにちは、あいち熊木クリニックの熊木です。

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『お前と俺は運命共同体だ!(3)』

~「もう悩まなくていい--精神科医熊木徹夫の公開悩み相談(21-3)」~

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A:<3;"味方"が"敵"となったとき>

ところであなたの場合ですが、この患者さんから、
すっかり"味方"と認識されてしまったようです。

<6ヶ月経ち、ようやく退院の日を迎えたのですが、その日の夜、
「つきあってほしい」と告白されてしまったのです。

そこで「他に好きな人がいる」といったところ、突然怒り出したのです。
「そんな関係壊してやる」って。「お前と俺は運命共同体だ」ともいいました。>

さあ、大変です。

"味方"だったはずのあなたが、翻って"敵"だと見なされるようになったのです。

こういう場合、最初から"敵"である人物に対してより、一層恨みが深まります。

彼からすれば自分は、ひとたび信じ気を許した人物に
手ひどく"裏切られ"た"被害者"ということになります。

これまでの人生で自己のナルシシズムを否認されつづけたことにより、
鬱積されてきた恨みつらみが、ここぞとばかりあなたに傾注されます。

すなわち、つけまわし覗き見るという卑劣な手口で、
あなたを心理的に追い詰め、自分のゆがんだ欲望を満足させようとします。

これは「この俺を深く傷つけるような悪者」に
"正義の鉄槌"をくだすという大義名分
(自分のなかでしか整合性がないものですが)があるため、
自ら悪事に手を染めているという反省および自責の念は、
まったく欠落しています。

(しかし、社会的には容認されないことであるという自覚はしっかりあるので、
警察に捕まらないように周到な手口を用意しています。

本当は臆病者ですから、法で裁かれることを、ことのほか怖がっています。
そのため、「誰かにいうと大変なことになる」などと、あなたを脅すわけです。
結果として、このような振舞いで、より罪を深めることになるのですが)

それどころか、陶酔感さえ伴うので、
ストーキングがどんどんエスカレートしていく傾向があります。

(つづく)


熊木徹夫(あいち熊木クリニック<精神科医・漢方医>)
あいち熊木クリニックのサイト:http://www.dr-kumaki.org/
臨床感覚の広場のサイト:http://www.dr-kumaki.com/

『お前と俺は運命共同体だ!(2)』
こんにちは、あいち熊木クリニックの熊木です。

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『お前と俺は運命共同体だ!(2)』

           ~ 精神科医熊木徹夫の「臨床公開相談」(21-2)~

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A:<2;ナルシシズムの癒すためだけの他者>

このタイプは、生まれつきの資質、そして生育環境が相まって、
幼い頃の自己万能感をそのまま肥大化させてきたものと思われます。

通常は、大人になる過程で、有能な他者に遭遇し、
「自分はそれほど大したものではない」と悟るような
軽い挫折体験を繰り返し、
世の中で自己をどう折り合わせるか考えてゆきます。

しかし、その挫折体験が深すぎて、過剰な反発がめばえたか、
あるいは挫折体験を全く経ないで年を重ねてしまったか、のどちらかにより、
強固ではあるものの非常に脆いナルシシズムを作りあげてしまったのです。

このような人物の根拠のない自信ほど、手に負えないものはありません。

これまで、自己に対する強烈なナルシシズムを
撒き散らしてきている訳ですから、当然のことながら、
まわりから"鼻つまみ者"という扱いを受けてきたはずです。

その過程で、そのナルシシズムは深く傷つき、
そして社会に対する猜疑心は、とても強まってきています。

彼にとって他者は、自己の肥大化したナルシシズムを
癒すためだけに存在します。

そのため、他者というものを見る場合、
その人物が自分の"敵"(自分を受容しない"不届き者")であるか、
"味方"(自己満足のため利用できる"都合のいい奴")であるかに、
おのずと分ける習性があります。

自分の"敵"には恨みを向けるし、
"味方"は完全に支配し、徹底的に利用し尽くそうとします。

彼を優しく包み込もうとしてくれるような母性愛あふれる人物は、
利用・収奪の絶好のターゲットです。

(看護師は人助けが仕事という人々ですから、そういう意味で危険です)

またその支配の仕方は、言語を絶するほど執念深く陰湿です。

また、突然暴力を振るった直後に、泣いてひたすら謝るといったように、
一つひとつの言動に大きな"落差"があるのが特徴です。

相手に一触即発の危機感・恐怖感を持たせるのが、彼らの常套手段です。

(感情のおもむくまま振舞っているようにみせて、
実はその裏に"冷徹な悪意"が存在します)


(つづく)


熊木徹夫(あいち熊木クリニック<精神科医・漢方医>)
あいち熊木クリニックのサイト:http://www.dr-kumaki.org/
臨床感覚の広場のサイト:http://www.dr-kumaki.com/

『お前と俺は運命共同体だ!(1)』
こんにちは、あいち熊木クリニックの熊木です。

「あいち熊木クリニック」のご紹介

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『お前と俺は運命共同体だ!(1)』

           ~ 精神科医熊木徹夫の「臨床公開相談」(21-1)~

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Q:21歳、看護師になりたての者です。

私は今、整形外科病棟にいますが、
24歳の男性患者さんのリハビリを担当していました。

この方は、自動車の運転中に正面衝突し、
たくさんの箇所の複雑骨折を負われたのです。

初めての担当患者さんでもあり、
してあげられることは何でもしてあげようと、とても頑張ったんです。

ある時、「Oさん(私のことです)、いる?」と
この患者さんに呼び出され、長い時間話を聞くことになりました。

実は5年間つきあった彼女にふられ、
やけを起こして車で突っ込んだ、というのです。

なんだかとてもかわいそうになり、手を握ってあげました。

そして、私の携帯電話番号を教えてあげたのです。

それ以来、病棟からよく電話がかかってくるようになりました。

患者さんはよく「この話、内緒にしておいてくださいね」というので、
誰にも言わないでずっと過ごしてきました。

6ヶ月経ち、ようやく退院の日を迎えたのですが、その日の夜、
「つきあってほしい」と告白されてしまったのです。

そこで「他に好きな人がいる」といったところ、突然怒り出したのです。

「そんな関係壊してやる」って。

「お前と俺は運命共同体だ」ともいいました。

それから、いやがらせの日々がはじまりました。

繰り返しの無言電話、私の行動の観察日記
(どこかで見ているようなのです。でも私にはどこにいるのかわかりません)、
病院に血のついたカミソリを送られてきたこともあります。

「誰かに言うと大変なことになる」といわれているので、誰にもいえません。

そして外出するのが怖くてしようがなくなり、
病院にいくこともできなくなってしまいました。

いつも見張られている、聞き耳をたてられている、そんな感じです。

これからどうしたらいいのかわからないのです。

どうかアドバイスをください。



A:<1;ストーカー、"妄想型"と"自己愛型">


これは、いわゆるストーカーです。

ストーカーには、大きく分けて2タイプあります。

ひとつは"妄想型"、そしてもうひとつは
"自己愛型"とでもいうべきものです。

前者は、パラノイア(妄想症)という病名がつく場合もあります。

このタイプは、あなたと特別な関係があるという妄想
(例えば、「あなたが俺のことを好きでしょうがないから、
あなたと付き合ってやらなくてはならない」と思い込む、など)
に基づき行動するので、
見境いのない言動に出ることが多いです。
そのため、警察に捕まるのも早いです。
しかし、何度警察に捕まっても、
性懲りもなく同様の行動を繰り返すのです。

すなわち、自らの言動の違法性に気づかないのが特徴です。

それに対し、後者はいわば"究極のジコチュウ"で、
宇宙は自分を中心に回っていると疑わないタイプです。

あなたの関わったこの人物は、後者のタイプです。
もう少し詳しく探ってみましょう。


(つづく)

熊木徹夫(あいち熊木クリニック<精神科医・漢方医>)
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